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メダロット3
 メダロット3は、1、2でお馴染みレギュラーに加え、新キャラを登場させて展開しています。
 新システム「メダリア」「メダフチェンジ」が導入されました。
 ハードも、カラーGB専用に固定できたことにより、グラフィックの強化が図れました。
 また各キャラクター(イッキ、アリカ、コウジ、カリン、Mr.うるち)にアニメ声優さんたちを起用しています。声優さんたちに好きな言葉を喋ってもらえるのが、楽しかったです。フフフ。
 いつも同じ展開では面白みに欠けるかと思い、メダロット3ではシナリオの方向性を変えてみることにチャレンジしました。
 メダロットは、シリーズを通じてだいたいあっけらかんと明るく楽しく軽〜いノリが主だったのですが、3ではちょっとシナリオをシリアス方面に傾けてみることにした。
 テーマは「環境問題と友情」と、これまたちょっと重いです。これは、ダークに偏りがちな私としては、ちょっと危険な挑戦ではありました。
 何とか自らに課したルールを守り、ストーリーが闇に流れないようにしたつもりです。
 各章、重めに始まり、最後はみんなハッピーエンドで終わるように心がけました。終わりよければ、全て良しですよね?
 メダロット3は、イッキ編のシリーズ中最もクセが強いので、好き嫌いは分かれるところかもしれません。あまりメインターゲット層のことを考えた展開になっていないような気もしています。
……次は絶対軽めの路線に戻そうと、決意しました。

 それでは「ボツになっちゃったネタの巻」のダメロット通信をどうぞ
○メダロット3製作悲喜交々
 前作、前々作でシステム製作とディレクターを兼任していた白玉くんがついにギブアップ宣言をし、結果ディレクターのポストが私に回って来ることになりました。
 シナリオ製作とディレクターの兼任となれば、今まで以上の地獄を見ることは火を見るより明らかで、何とか避けたいところでありました。
 ですが偉いヒトから「ディレクターをやるか、辞めるかどっちだ?」という二択を迫られてしまっては、引き受けざるを得ませんでした。私は、まだまだメダロットを人の手に委ねたくはなかったのです。
 メダロットを作ったといっても、私は一社員に過ぎません。ですから会社が決定を下せば、私がいてもいなくても続編は作られることになります。
 この時、すでに我が子同然のように思っていたメダロットを作り続けるためには、無謀と解っていてもディレクターを引き受けるしかありませんでした。そんなわけで、メダロット3は私が最も地獄を見た作品となりました。
 とはいえ私がシナリオのボリュームを抑え、手を抜けば、開発費と開発期間は抑えられ、ここまでの地獄を見ることはなかったでしょう。社員であるかぎり、月々の給料は保障されていたわけですし、勤務時間も短縮され、休日だって休めたはずです。
 ですが私はあえて茨の道を選びました。納得できないものは作りたくなかったのです。そのために、たくさんの方々にご迷惑を掛けることになってしまいましたが……。
 当時、社内にRPGを作るノウハウはほとんどありませんでした。メダロット以前にRPGを作った経験のある社員も皆無に等しかったようです。
 ですので、まずはツールを作ることから始めなければなりませんでした。シナリオのボリュームが少ないうちならば何とかなっていたものも、ボリュームが増えるにつれ従来のツールでは対応しきれなくなってきたのです。
 こうしてメダロット3で新たなイベント作成し変換するツールが作成されたのですが、これが何と、一章分のイベントをエクセルのデータからゲームデータに変換するのに何時間もかかるという代物だったのです。
 このツールでは、一部分をちょっと直してすぐチェック、ということができませんでした。一部分をいじったために新たなバグが生まれることも多々あるのに、まとめてイベントを修正、追加した後で数時間かけてチェックできる状態に変換するのです。それはそれはもう苦労の連続で、泊り込みなど当たり前の状態でした。
 当時、私が社内で一番長時間労働をしていたと思います。一睡もせず明くる朝のディレクター会議に出席し、誰に何を言われているのか、自分が何を言っているのかも解らない状態で、そのままシナリオとイベント作成の仕事を続けたこともありました。一週間のうち、二日くらいしか自宅に戻らない週もありました。
 人員を増やせば増やすだけの苦労もあります。私は元々、人の上に立って人を使う、ディレクターのような仕事はとても苦手です(ちなみに、「人の上」といっても「ツリーの上にいる」というだけの話で、決して「偉い」というわけではありません。むしろディレクターは、上司と部下の間で板ばさみになる、最も悲惨な立場ではないかと私は思っています)。
 筆舌に尽くしがたいほど辛いことは多々ありましたが、しかしそれでも私に辞めようという考えは浮かびませんでした。
 今私が辞めればメダロットは完成しない、私がここで辞めるわけにはいかないと、何とか踏みとどまりました。走り出した後は引継ぎなど不可能に近かったですし、途中で辞めるくらいなら、最初から引き受けない方がましだと思ったのです。
 チームメンバーを始めとしたたくさんの方々の助力を得て、メダロット3も何とか日の目を見ることができました。
 様々な特技や能力を持つ者たちが力を合わせて作るゲームは、総合芸術と言ってもいいのではないでしょうか。一人では成し得ないものを作り上げた喜びは、どんな苦労にも勝ると思うのです。
 メダロット2、3、4のラストに書いたメッセージは、そこまでプレイしてくださったプレイヤーの皆様、そして完成に向け一緒に戦ってくださった方々へ向けての思いも入ってます。
……それにしてもやっぱり、個性豊かでアクも強い技術屋な方々をまとめあげる立場というのは何と言うか……ゲーム製作にはコミュニケーションが不可欠ということですよね。つまり。
○キャラクター命名について
 前作のメダロット2では、キャラクター名が確定するまでに紆余曲折ありました。
 メダロットの一作目が「米」縛りで、メダロット2が「酒」縛りとなったことは前述しましたが、メダロット2では「何」縛りにするかで、結構もめたのです。
「虫」縛り「植物」縛り「魚」縛りetc……色んな候補を上げるために、図書館に入り浸った時もありました。仮の名前のままではキャラクターイメージも固まり切らないので、一刻も早く決めたかったのですが、一向にOKは出ませんでした。
 途方に暮れたころに、ようやく「酒」縛りということでOKがでました。そこでようやく、登場キャラ達の名前を決定づけることができたのです(ただ、主人公一気飲みのイッキの名前に関しましては、イッキ自身が熱血キャラという設定ではなかったので、リテイクが出かけました。しかし、そのうちに馴染んでしまったようです)。
 そこでメダロット3の話に戻りますが、前作において「名前で苦労した」という記憶が残っていた私は、「きっとまたリテイクが出るだろうし、とりあえず新キャラ名は適当に命名しておけばいいよね」という安易な考えの元、新出のキャラには本当に適当な名前をつけていきました。
 実際、ただ「ゲームボーイカラーだから」という理由でそれぞれのイメージカラーをもじっただけの四大スピリットたちの名前は、カワムラー氏から考え直すよう言われていたのですが、しばらくすると「もう慣れましたからいいです」とのお返事をいただきました。
 そういうわけで、新出のキャラたちは捻りも何もない名前になっております……。