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メダロット4
 毎度お馴染みイッキと愉快な仲間たちによるストーリーとなっております。メダロット4では路線を戻し、明るく軽いノリを復活させております。
 シナリオのボリュームもまたも増量されております。何度地獄を見ても懲りておりません。これまた今更ですが関係者の皆様、ごめんなさい。
 ちなみにメダロット3の経験から、「ディレクター業とシナリオ製作の兼任は無理です」と訴えたら、上の方も納得してくださったようで、私は再びシナリオのみの担当に戻されました。
 やはりこういったことを納得してもらうためには、身をもって証明しなければならないということでしょうか……。
 メダロット4のシナリオには、同性愛及び宗教ネタの要素を入れてみました。そういったキワドイ要素をライトタッチなノリでオブラートに包むことにより、任●堂さんにどこまで通じるのか試してみたくなったのです。そんなことを企んでしまうのも、私の抑えきれぬ闇属性のせいだったかもしれません。
 同性愛ネタで女のコ(レ●)の方は、「朱雀のシュリ」とカリンです。
 四天王の一人「朱雀のシュリ」は、美しさこそ正義という信念の持ち主です。捕らえた美少女カリンに独占欲剥き出しで迫ります。そしてカリンを取り戻しに来たイッキたちには激しい敵対心を抱く、というネタです。
 そして男のコ(ホ●)の方は、やはり四天王の一人「玄武のコクエン」と我らが主人公イッキのネタです(あ。かわいい男のコ好きのオ●マ、ユキエちゃんというネタも入れてました)。
 メイドの扮装をして忍び込んだイッキに、コクエンが一目惚れ、というものです。
 メダロット4ではシナリオのボリュームが膨大だったため、私がメインのシナリオを書いた後は、細かいイベント製作をバイトの方々にお任せしていました。
 バイト氏たちは皆男性であったので、私は単純に「きっとレ●ネタの方に食いついてくれるに違いない」と思い込んでいました。
 そのため私は、ほんの少しだけホ●ネタの方に重点を置き、彼らにイベント製作を委ねることにしたのです。
……ところがっ!
 何と彼らが食いついたのは毎度お馴染みのイッキの女装ネタと(ホ●)ネタの方だったのです。出来上がったイベントを見て、私はあまりのノリノリっぷりに驚いてしまいました。
 少なくとも私は、コクエンがイッキに執着するのは「イッキが女装を解き、男とバレるまで」というつもりでシナリオを書いていました。
 しかしコクエンは、シナリオクリア後もイッキを「メイド少女〜」と追い回し続けることに。
 デバッグで協力してくださった先輩さんから「これはちょっとやりすぎちゃう?」と言われたのですが、私は「(やっぱり)そう思いますか」と言っただけで、結局そのまま採用することにしました。
 ダメ出ししなかった時点で監修していた私がやったも同然ですが、私はこの時、彼らの勢いを止める気になれなかったのです。
 そしてそれが原因で、ある現象が起こってしまいました。
 私の書いたメインシナリオでは、クライマックスにコクエン再登場のシーンがあります。そのシーンのコクエンを、私は「男と解ったイッキへの執着はなくなっている」という前提で書いていたのです。
 ですからこのシーンでの、イッキに対するコクエンの「お前さえいなけりゃあ!」という態度と、クリア後バイト氏が作成した「メイド少女〜」とイッキを追い回すコクエンの態度が180度異なっているのです。
 図らずもコクエンが分裂症のようになったために、彼の変態っぷりがより強調されてしまったような気がします。
 さらにもう一つのネタ、「宗教」に関してですが。
 当時、新興宗教が起こす数々の事件が新聞の紙面を賑わしていました。よって(そうでなくてもただでさえ)、皆「宗教ネタ」には用心深くなっていたのです。
 ですが私はそんな危険なネタに手を出してしまいました。メダロット4では魔が差しまくっていたのかもしれません。
 もちろん実在の団体とは何の関係もないフィクションではありますが、それでも「宗教を彷彿とさせるネタ」というだけで、かなり危険を伴っていたと思います。
 その章を預けたバイト氏には、「一般人には適当に『ハクマさま〜』という感じで喋らせておいてほしい」という注文をしていました。
 しかし途中で、やっぱりまずいのかな? と考えた私は、せめてそれっぽい単語だけでも削除しようかと思い立ち、バイト氏に預けていた章のチェックをしてみたところ……。
 すでにその章は、改変不可能なほどに宗教ネタで埋め尽くされてしまっていました。

 こうしたバイト氏たちの活躍もあり、メダロット4は結構カゲキなネタで埋め尽くされていきました。
 これには仕掛け人である私も、GBソフトであるということと対象年齢のことを考え、だんだん不安になっていきました。
 私は「これはさすがに任●堂さんかイマ●ニアさんのどちらかからクレームが来るだろうから、修正しなければならないだろう」と思い、修正する期間のことを考えてかなり焦ったものです。
 ところが任●堂さんなどから来たバグ表は、「『メイド少女』が『メイドガール』になっています。『メイド少女』で統一してください」「『修行』という言葉は、やめてください」といった内容のものでした。
 そういうわけで止める者がいないまま、メダロット4は暴走しまくりのイッキシリーズ最終章となりました。
……しかしその裏には、イマ●ニアさんが「これ以上はカンベンしてくださいよぉ」とお願いする場面があったとかなかったとか(スミマセン)。
 ところで任●堂さんの判断基準には、私の理解を超えたところがありました。
「快盗レトルト」の扮装をしたイッキが「酒はのんでものまれるな」という台詞を喋るシーンがあったのですが、任●堂さんからは「小学生にお酒に関する言葉を喋らせないでください」とのお達しが来ました。
 しかしそれを言うならば、メダロット2から主人公たち小学生キャラ名は全てお酒関連の名前なのです。
 これをここにきて変更というのは不可能な話ではありましたが、よかったのしょうかね、本当に。
 疑問が残る今日この頃でした。
○メダロット三原則その2・海辺でのシーン
 イッキ編最終章ということもあり、私は私自身の判断で導入したメダロット三原則について、メダロットたちの思いを、主人公でありパートナーであるイッキ(そしてプレイヤーの皆様)に向けて語らせたいと思いました。
 その時すでに締め切りはとうに超え、気力体力共に(そして容量も)限界に達していましたが、海岸で波の音を聞きながらイッキとメダロットが語り合うシーンを、私は何としてでも入れようと考えました。そして、すべてのメダルの台詞を自分の手で打ち込んだのです。
 私がそれぞれのメダルと会話できるというパートナーシステムを提唱し、導入しておいてもらいながら、このシーン以外ではほとんど活用できていなかったように思います。
 本当はもっともっと、いろんなシーンでこのシステムを活用し、イッキとメダロットたちとの心の交流を描きたかったのですが、どうにも余裕がありませんでした。
 ともかく、海辺でのシーンによってパートナーを思う真剣なメダロットの思いが、少しでも皆様に伝わったならば幸いです。
○「人を使う」ということ
 初代メダロットではシナリオの再構築と作成を、そしてメダロット2ではボ●ボンさんからのシナリオソース(登場させるメインキャラクターやいくつかのイベント、施設など)を元に、私は単独でシナリオ作成に打ち込むことができていました。が、メダロット3以降は私が増大させたボリュームのために作業量がすさまじく増大し、私一人がこなせる作業量ではどうにもならなくなってしまいました。
 そうなると、どうしてもシナリオに割く人員が必要となります。よって、メダロット3では私の監修の元に一人、4では3人の人員を補充することとなりました。
 人を増やせば、当然人件費がその数に比例して発生します。膨大な開発費のほとんどは人件費でした。しかも、単純に人を増やしたからといって、それだけ作業効率がアップするというものでもありません。任せる仕事が単純作業ならまだしも、シナリオのイベント製作なのです。人員を三人増やして、「さーがんばって!」と丸投げしたら、私が寝ていてもシナリオが三倍速で出来上がる……なんて訳は、もちろんありません。
 シナリオのメイン部分は私が担当しないとストーリーが破綻しますので、任せられる部分は自ずと限られます。メインには直接関わりの無い一般人の会話や、ギャグ

 任せられない部分がかなり多いため、人が増えても私は相変わらず休日がほとんどなく、早朝から終電まで、時には徹夜で仕事という勤務状態が続きました。

 一人増やせば一人に、三人増やせば三人に、作業手順やシナリオ、仕事内容などを説明し、理解してもらう必要があります。
 いくらメイン部分ではないとはいえ、ちょっとした会話一つを任せるにしても、最低限キャラクターの性格や口調は把握してもらわないと人格破壊になりかねません。当然チェックも欠かせません。


 質問の数は×3になります。当然です。私が逆の立場ならやはり質問しまくりです。
 その分、私の仕事が遅れます。つまり、人を増やせば増やしただけ増える仕事もあるのです。

 私が上な方に人員の増員をお願いしたとき、「人を増やせば増やしただけ、しんどくなるぞ」と言われました。本当にそのとおりだと実感しました。
 時間さえ許すのならば、一人でシナリオをやり遂げたいと
 それはもちろん、バイト氏たちの能力が低かったからというわけではありません。それどころか、バイト氏たちは皆とても優秀な方々であり、幸運なめぐり合わせだったと思っています。
 それでも「人を使う」というのは大変なのです。

 ですが、それぞれのバイト氏たちには私とはまた違う、ステキな感性がありました。彼らそれぞれの独特の色は、シナリオの端々に滲み出ていたと思います。
「とおくのものをとるときは『じょそう』しなくちゃね」とイッキに女装させるイベントなど、私には思いつけませんでした(このイベントは容量の関係で一度削られましたが、私の要望で復活しました)。
 またメインシナリオ終了後、シノビックパークで開催されるお馴染み「パーツンラリー」では、特に自由に作ってもらいました。
「メイド少女〜」「メイド少年です、会長」なんて展開は、私にはとてもできなかったでしょう(いろんなイミで)。
 バイト氏たちの活躍がなければ、シナリオを発売までに完成させることは不可能だったでしょう。
 しかし、「人を使う」という立場は本当に辛かった……。

 またバイト氏だけでなく、北玉さん以外のいろんなプログラマーさんや絵師の方々への様々な注文や発注なんていうのも大変なプレッシャーでした。一番人員が少なかった初代メダが精神的には一番楽であったとは言えます。


 使うよりは使われたい。私はそんなタイプでして。向き不向きはありますよね。仕事となると、そんなことは言っていられないのですが。